pubDate: 2024-05-09
author: sakakibara
仮説を検証するシチュエーション・環境として以下の3つが考えられる。
仮説がどちらか一つの研究方法をとるというわけではない。 どちらも適用できる仮説というものもある。
例えば、エリマキトカゲの襟は配偶者獲得のために発達するという仮説を考える。
操作的研究の立場をとると、エリマキトカゲの襟を操作する。 あるグループは襟を取り除かれ、もう一つのグループは襟を取り除かれない。もう一つのグループは別のグループで取り除かれた襟をつける。 そして、その後の交尾の回数を調べる。
相関的研究の立場をとると、エリマキトカゲの襟の大きさと交尾の回数の相関を調べる。
操作的研究・相関的研究のどちらも一長一短がある。
相関的研究のメリットは簡単なところである。 また、人間にとっても簡単なだけでなく、対象に余計な影響を与えないため、自然な状態でのデータをとることができる。 反対に操作的研究のデメリットはその過程が複雑であり、対象に影響を与えることである。 そもそもエリマキトカゲの襟を取り除いたらエリマキトカゲにかなりストレスを与えるだろう。 それにより餌を得る回数が減り、交尾の回数が減るかもしれない。
相関的研究のデメリットは相関というものが因果関係を示すものではないというこである。 つまり、因子Aと因子Bには直接的な関係がないにもかかわらず、別の因子Cが因子A, Bに影響を及ぼすために相関がみられることがある。これを第三の変数の問題という。 例えば、エリマキトカゲの襟が大きいと交尾の回数が多いという相関があったとしても、実際にはエリマキトカゲの襟が大きいということはエリマキトカゲの体力が強いということであり、体力が強いということは交尾の回数が多いということにつながるかもしれない。 つまり、エリマキトカゲの襟の大きさと交尾には因果関係どころか、関係すらないかもしれない。
別の例として、アイスクリームの売り上げと溺死者数の相関があるということがある。 アイスクリームが売れると溺死者数が増えるわけがなく、単純に夏になるとアイスクリームが売れるということと、夏になると水泳をする人が増えるということが関係しているだけである。
また、逆の因果関係という問題もある。 例えば、麻薬常習犯は経済的に困窮しているということがある。 これは麻薬の常習が経済的困窮を引き起こすということもあるが、逆に経済的困窮が麻薬の常習を引き起こすということもある。 もしかしたら相互的に影響し合っているかもしれない。 このような関係を逆の因果関係という。
操作的研究のメリットは以上で挙げた第三の変数の問題・逆の因果関係を回避できることである。
相関的研究と操作的研究の違いを理解し、使い分けることが重要であるが、常にそれが可能とは限らない。 特に、操作的研究は実施できない場合がある。