pubDate: 2024-03-19
author: sakakibara
位相空間の具体例
位相空間は現代数学の基盤でありながら、その実態をとらえることが難しい概念である。
逆説的に、実態をとらえることが難しい抽象的な概念だからこそ、数学の基盤としての役割を果たしているとも言えるが、初学者にとってはその抽象性が理解の弊害となることもある。何より自分が何度も挫折した。
そこで、ベクトル空間を学ぶ際に、速度ベクトルや力ベクトルを考えることがベクトル空間の理解に役立つように、位相空間を学ぶ際にもなにかしらの具体例があると理解が進むだろう。
この記事ではベクトルという概念に対する速度ベクトルのように、
位相空間に対して開球体について中心に焦点を当てることで、位相空間の理解を深めることを目的とする。
位相空間を知ることで多くの数学の分野にアクセスすることができる。
位相
ここでは、位相の定義について述べる。
ある集合族O(集合を元とする集合)を考え、その元が和と積の演算に関して閉じていて、Oが空集合と全体集合を含むとき、集合族Oを位相と呼ぶ。
位相空間
def :
空でない集合Xについて、Xの部分集合の族Oが以下を充たすとき、Oを位相という。
X∈O,∅∈O O1,O2,…,Ok∈O⟹O1∩O2∩⋯∩Ok∈O {Oλ}λ∈Λ∈O⟹λ∈Λ⋃Oλ∈O
位相Oが備わった空でない集合Xを, 集合と位相の組(X,O)で表し位相空間とよぶ。Oの元Oを(位相Oの)開集合と呼ぶ。
注意として、積(共通部分)は有限個の元に制限されているが、和(和集合)は無限個の元についても成り立つことに注意する。
位相空間の具体例
位相空間の具体例として、最も単純な例として、以下がある。
- 集合族O={X,∅}は位相となる。
- 集合族Oには∅とXが含まれているので条件(1)を充たす。
- また、X∩X=X∈Oなので条件(2)を充たす。
- また、X∪ϕ=X∈Oなので条件(3)を充たす。
よって集合族Oは位相となる。これは密着位相と呼ばれる。
- 集合族O=2X(Xのあらゆる部分集合を元にもつ集合)は位相となる。
- 集合族2Xには∅とXが含まれているので条件(1)を充たす。
- 任意のO1,O2,…,Ok∈2Xについて、O1∩O2∩⋯∩Ok∈2Xなので条件(2)を充たす。
- 任意の{Oλ}λ∈Λ∈2Xについて、⋃λ∈ΛOλ∈2Xなので条件(3)を充たす。
以上はある種自明な例であるが、より実用的な例を考える。
集合X=R3の集合族Oを以下で定義する。
Ba,rO={(x,y,z)∣(x−ax)2+(y−ay)2+(z−az)2<r}={Oa,r∣Ba,r⊂Oa,r∀a∈X,∀r≥0}
Ba,rをaを中心とし、半径rの開球体と呼ぶ。
今考えている集合族Oは、開球体を中に持つ集合を集めた集合である。
- r=1のとき、Ba,1⊂R3=X∈Oとなり、
r=0のとき、Ba,0=∅∈Oとなるので、条件(1)を充たす。
- Oa,1,Ob,1を考える。その共通部分も開球体を持つのでOに含まれる。よって条件(2)を充たす。
- Oa,1,Ob,1を考える。その和集合も開球体を持つのでOに含まれる。よって条件(3)を充たす。
果たして、これで開球体を含む集合を元にもつ集合Oが位相となることがしめされた。
注意すべきは開球体が開集合となるのではなく、開球体を含む集合が開集合となるということである。
今回はR3の場合について考察したが、Rの場合には開球体は開区間となる。
Rの場合については開球体が開区間となるが開集合とはならないことに注意しよう。
(ちょっと怪しいかも)
一般的に、Rnで定義される位相のことを自然な位相と呼ぶ。
ところで、開区間に対して閉区間という概念がある。では、開集合に対してい閉集合という概念を定義する。
(閉球体の話は?)
def :
位相空間(X,O)の部分集合FについてFが閉集合であるとは、Fの補集合Fcが開集合であることを言う。
実は?というか、閉集合から位相空間、開集合を定義することもできるが、実用性がないし、そこから導かれるあらゆる性質も開集合を用いて位相を定義した場合と同じになるので、今回はあまり立ち寄らないことにする。
(具体的と謡ながら、あまり具体的な例を挙げていない。)
距離空間
先程開球体を用いて位相を定義したが、距離が定められた空間は必ず位相を導入できる。
(同じ集合で異なる位相の例が必要)